こんにちは。
妊娠中は「食べてはいけないもの」「気をつけたほうがいいもの」がいろいろありますよね。
お寿司や生ものを控えている方も多いと思いますが、実はそれだけではなく、生ハムや未加熱のナチュラルチーズにも注意が必要なんです。
それは「トキソプラズマ」という小さな寄生虫から、赤ちゃんを守るため。
今日は、このトキソプラズマについて、分かりやすくお話ししますね。
トキソプラズマってなに?
トキソプラズマは、猫のフンや土、生肉などに存在する寄生虫の一種です。
空気を介してうつることはなく、直接体内に入ることで感染します。
実は、世界の約3人に1人が感染しているとも言われています。
ヨーロッパなど生肉やナチュラルチーズを食べる文化のある国では特に多く、日本ではおよそ10%ほどの人が感染歴ありとされています。1
健康な大人が感染しても、ほとんどの場合は症状が出ません。
でも、妊娠中など免疫力が下がっているときには、発熱や関節痛、筋肉痛のような症状が出ることもあります。1
そして何より注意したいのが、妊婦さんが初めて感染した場合、胎盤を通して赤ちゃんに感染することがあるという点です。1
感染を防ぐためにできること
生肉についているトキソプラズマは67℃以上の加熱または−12℃以下での冷凍で死滅します。
つまり「しっかり火を通す」「よく凍らせる」ことで防げます。
避けたい食品の例を挙げると…
- 生肉(ステーキのレアやユッケなど)
- 生ハム、生サラミ
- 未加熱のナチュラルチーズ(カマンベールなど)
- ジビエ(野生の肉)
また、海外では生の貝類で感染した例もあります。
生野菜や果物は、しっかり洗ってから皮をむくのがおすすめ。
生肉を切ったまな板や包丁で野菜を調理しないように、調理器具は使い分けましょう。
手洗いも石けんでしっかり丁寧に。
井戸水や湧き水など、飲料水以外は避けましょう。
ガーデニングや農作業などで土に触れるときは手袋をして、作業後に石けんで洗うのが安心です。
小さなお子さんがいる家庭では、砂遊びのあとはしっかり手洗いを教えてあげてくださいね。3
猫を飼っているけど大丈夫?
猫ちゃんがいるご家庭では特に気になるところですよね。
実は、トキソプラズマが「オーシスト」という固い殻に包まれた形でフンに出るのは猫科の動物だけ。
でも安心してください。
ずっと室内で飼っている猫ちゃんなら、感染の可能性はとても低いです。
感染源になるのは、外でネズミや鳥などを食べてしまう場合。
だから、猫を完全室内飼いにして、生肉は与えずキャットフード中心にすることで予防できます。
猫がトキソプラズマに感染しても、オーシストを排泄する期間はわずか2週間ほど。
そのうえ排泄直後のオーシストはまだ感染力がなく、24時間以上たってから感染力をもちます。
ですから、猫のトイレは毎日掃除して、できれば妊婦さん以外が担当するのがベスト。
熱湯で消毒できるとさらに安心です。
ちなみに、オーシストは家庭用冷凍庫では死なず、アルコールや漂白剤も効きません。
だからこそ「土や猫のフンに直接触らないこと」が大切なんですね。3
検査でわかるトキソプラズマ感染
妊婦健診の初期に行われる感染症検査の中には、トキソプラズマの抗体検査が含まれている場合があります。
結果は次のように解釈されます。
- IgG陽性:過去数か月以前から数年以内に感染したことがあり、すでに免疫(抗体)がある
- IgM陽性:最近(およそ2週間以内)に感染した可能性がある
初感染の可能性があるばあい、医師の指導のもとで治療を受けられるようになっています(2018年から保険適用)。2
胎児への影響は?
ママが感染しても、必ずしも赤ちゃんに感染するわけではありません。感染時期によってもリスクや症状の出方は異なります。
- 妊娠初期:胎児に感染しにくいが、感染した場合は重症化しやすい
- 妊娠後期:感染しやすくなるが、赤ちゃんの免疫も育っていて症状は軽くなりやすい
中には、症状がほとんど出ずに成長してからわかるケースもあります。
だからこそ、「予防」がいちばんの安心につながるのです。2
トキソプラズマが行動を変える?不思議な研究結果も
2014年には「トキソプラズマ感染が人の性格や行動に影響するかもしれない」という研究がイグ・ノーベル賞(ユニークな研究に贈られる賞)を受賞しました。
感染した人は、リスクを取りやすくなったり、性格傾向が変化する可能性があるという報告もあります。
もちろん、これはまだ研究段階の話ですが、寄生虫が私たちの体や心にどんな影響を与えるかが少しずつ解明されてきています。
まとめ:知っていればこわくない!
妊娠中に「生ものを避けましょう」と言われる理由のひとつが、このトキソプラズマ感染の予防です。
ただ、「猫からうつる」と聞いて不安になる方もいるかもしれませんが、ずっと室内で飼っている猫ちゃんを手放す必要はありません。
大切なのは、
- 生肉や生ハムを避ける
- 食材をしっかり洗う・加熱する
- 手洗い・調理器具の衛生を守る
- 猫のトイレ掃除を妊婦さん以外が行う
この4つを意識することです。ママが安心して過ごせる環境を整えて、赤ちゃんをしっかり守ってあげましょう。そして何より、過度に心配せず、「できることを丁寧に」がいちばんです🌷
実際の授乳・栄養管理については、医師・薬剤師・助産師など専門家にご相談ください。
参考文献
- トキソプラズマ症|国立健康危機管理研究機構 感染症情報提供サイト
— https://www.mhlw.go.jp/…
↩
- 国立研究開発法人 日本医療研究開発機構(AMED)成育疾患克服等総合研究事業
サイトメガロウイルス、トキソプラズマ等の母子感染の予防と診療に関する研究班
トキソプラズマ妊娠管理マニュアル(第7版)
— https://www.jpeds.or.jp/
↩ - トキソプラズマ症(詳細版)|国立健康危機管理研究機構 感染症情報提供サイト — https://example.org/report
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