無痛分娩ってどんなもの?~ママと赤ちゃんにやさしいお産の選択~
お産の痛みを少しでもやわらげたい――。
そんな想いから「無痛分娩(むつうぶんべん)」を選ぶママが増えています。
初めて聞くと「本当に痛くないの?」「赤ちゃんへの影響は?」と不安もありますよね。
今回は、無痛分娩について、わかりやすくお話しします。
無痛分娩って、本当に痛くないの?
「無痛」と聞くと、まったく痛みがないように思えますが、実際は“痛みをやわらげる”お産です。
使われるのは「硬膜外麻酔(こうまくがいますい)」という方法で、背骨の近くに麻酔薬を入れて痛みを感じる神経を弱めます。
出産のときは「いきむ力」も必要です。
そのため、麻酔は完全に体を動かせなくするものではなく、あえて弱めに効かせるのが一般的。
その結果、「痛みはかなり軽くなるけれど、まったくゼロではない」というケースが多いのです。
お産の流れと麻酔のタイミング
お産は大きく3つの段階に分かれます。
① 陣痛が始まってから子宮口が全開になるまで
② 赤ちゃんが産道を通って生まれるまで
③ 胎盤が出てくるまで
麻酔を使うのは、①の「子宮口がある程度開いてから」。
そのため、初期の陣痛(まだ子宮口が小さい時期)は普通に感じることが多いです。
また、出産後の体の痛みも、麻酔が切れた後は自然分娩とほとんど変わりません。
無痛分娩のメリット
一番のメリットは、やはり「痛みがぐっとやわらぐこと」。
痛みが少ないことでママの疲労が軽減され、産後の回復が早い傾向があります。
また、強い痛みやいきみは赤ちゃんへの酸素供給を妨げることがありますが、無痛分娩ではママが落ち着いて呼吸できるため、赤ちゃんにも十分な酸素が届けられます。
お産中に冷静に医療スタッフの指示を聞けるのも安心ですね。
さらに、もし途中で帝王切開に切り替わることになっても、麻酔がすでに入っているためスムーズに移行できるというメリットもあります。
無痛分娩のデメリット
麻酔の影響で下半身の感覚が鈍くなるため、分娩中の歩行はできません。
トイレはカテーテル(管)を体に挿して、おしっこを取ることが多いです。
また、自然分娩と比べて子宮口が開いたあとの分娩時間が少し長くなる傾向があります。そのため、分娩促進剤を併用するケースもあります。
ごくまれに、麻酔薬によるアレルギー反応や血圧低下が起こることもありますが、医療機関では慎重に管理されています。
無痛分娩は「計画分娩」になることが多い
多くの病院では、無痛分娩は「計画分娩」という形で行われます。
これは、麻酔を担当する医師やスタッフの確保、事前準備が必要なためです。
ママと赤ちゃんの状態を確認し、出産しても大丈夫と判断されたら、前日の夜に入院し、翌日に陣痛を誘発してお産を進めるケースが多いです。
ただし、予定外に自然陣痛が早く始まった場合、麻無痛分娩が難しく、自然分娩になることもあります。
無痛分娩にかかる費用
費用は地域や病院によって差がありますが、一般的には「自然分娩費用+10~20万円程度」と言われています。
自治体によっては無痛分娩の費用を一部助成している場合もあるので、確認してみるとよいでしょう。
自然分娩は保険適用外(全額自己負担)ですが、帝王切開など医療行為を伴う場合は保険が適用され、自己負担は3割です。
無痛分娩の麻酔代は多くの場合「追加料金」として扱われます。
また、出産費用をサポートする「出産育児一時金」(原則50万円)が支給されます。
医療機関に直接支払われる制度を利用すれば、退院時には差額のみの支払いでスムーズです。
無痛分娩は医療費控除の対象になる?
無痛分娩は医療費控除の対象になります。
「痛みをやわらげる医療行為」として認められているためです。
控除の対象となるのは、妊婦健診・分娩費用(麻酔代を含む)・入院費・交通費(公共交通機関や必要なタクシー利用)など。
出産育児一時金は補填分として差し引かれるので、差額が控除の対象になります。
無痛分娩で医療費控除の対象になる具体的な費目妊婦健診費用(妊娠が分かってからの定期検診や検査費用)
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- 分娩費用(正常分娩に加え無痛分娩の麻酔代を含む)
- 入院費用(病院に支払う入院中の食事代や基本的な部屋代)
- 通院・入院にかかった交通費(公共交通機関利用分、および公共交通機関の利用が困難な場合のタクシー代)
- 産後の1か月健診費用
- 母乳外来や授乳指導費用など医師の診察に基づくもの
医療費控除対象外の費目例
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- 無痛分娩に伴う事前の講座やセミナー受講費用
- 差額ベッド代(個室代など)
- 入院中のパジャマや洗面用具などの身の回り品
- 出産に関係のない雑費や食費(外食・出前など)
- 自家用車のガソリン代や駐車場代
- おむつやミルクなど赤ちゃんの物品購入費用
無痛分娩でも母性はしっかり芽生えます
「痛みを感じないと母性がめばえない」と耳にしたことがある方もいるかもしれません。でも、それには科学的な根拠はありません。
無痛分娩はあくまで“痛みを和らげる”お産で、産前・産後の痛みや育児の大変さはどんなママにも訪れます。
帝王切開のママもたくさんの愛情を赤ちゃんに注いでいますよね。
大切なのは「どんな形であっても、自分と赤ちゃんが安全で安心に出産できること」。
無痛分娩を選ぶことは、決して「ラクをする」ことではなく、ママ自身と赤ちゃんのための“やさしい選択”なのです。
まとめ
無痛分娩には、痛みの軽減・体力の温存・赤ちゃんへの良い影響など多くのメリットがあります。
一方で、費用や計画分娩のスケジュール、医療体制などの確認も必要です。
大切なのは、「どんなお産が自分に合っているか」を知ること。
パートナーや医師とよく話し合い、安心して出産の日を迎えられますように🌷
※この記事の内容は、国立成育医療研究センター「無痛分娩について」を参考にしています。
この記事は薬剤師である筆者が、医学的根拠に基づき一般的な情報をわかりやすくまとめたものです。実際の接種については必ず医師・薬剤師にご相談ください。


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