母乳育児にこだわらなくて大丈夫。正しい知識で赤ちゃんに安全なミルクを。
この記事では、調剤薬局勤務の薬剤師が母乳と粉ミルクの違い・安全な調乳方法・液体ミルクの活用法まで、根拠に基づきわかりやすく解説します。
母乳が出ない・足りない場合はどうすればいい?
厚生労働省の調査によると、妊娠中に完全母乳育児を希望するママは約90%ですが、実際に生後1か月時点で完全母乳を続けているのは約半数にとどまります。母乳の分泌量は体質・産後の回復状況・赤ちゃんの飲む力など多くの要因に左右されるため、思い通りにいかなくても自分を責める必要はありません。
混合育児(母乳+粉ミルク)は赤ちゃんの栄養確保とママの心身の負担軽減を両立できる現実的な選択です。パパによる授乳分担、職場復帰・保育園入園への対応など、ライフスタイルに合わせて選ぶことが大切です。
母乳と粉ミルクの違い|成分・免疫・コストを比較
現代の粉ミルクは母乳成分を参考に開発されており、栄養面の差は大幅に縮まっています。ただし、免疫成分については大きな違いがあります。
母乳と粉ミルクの比較
| 項目 | 母乳 | 粉ミルク |
|---|---|---|
| 免疫成分 | 豊富(感染症予防に有効) | ほとんど含まない |
| 栄養バランス | 赤ちゃんの成長に合わせ自動的に変化 | 一定で管理しやすい |
| ママへの負担 | 授乳頻度が多い。外出先でも授乳可 | 誰でも授乳可能。外出時は準備が必要 |
| コスト | ほぼ無料 | 費用がかかる |
| その他 | ビタミンK・D不足が起こりやすい | 消化がやや遅く腹持ちが良い |
産後3〜5日間に出る初乳は免疫成分が特に豊富で、赤ちゃんの病気予防に重要です。可能であれば初乳だけでも飲ませることが推奨されています。なお、母乳を冷凍保存すると免疫成分の効力が低下するため、できるだけ新鮮なものを与えるようにしましょう。
母乳に不足しやすいビタミンK・Dの補い方
母乳育児で特に注意が必要なのがビタミンKとビタミンDの不足です。どちらも母乳中の含有量が少ないため、完全母乳の赤ちゃんでは欠乏リスクがあります。
ビタミン不足への対策
- K ビタミンK:出血予防のため、産後まもなく病院で投与されます。特別な対応は不要なことがほとんどです。
- D ビタミンD:日本では現在、赤ちゃんへの積極的な投与は行われていません。妊娠中から母体でしっかり補給することが大切です。日光浴・食事(魚類・卵黄など)・サプリメントを組み合わせて摂取しましょう。
参考:日本小児医療保健協議会栄養委員会「乳児期のビタミンD欠乏の予防に関する提言」(2025年)
乳幼児突然死症候群(SIDS)と母乳の関係
乳幼児突然死症候群(SIDS:Sudden Infant Death Syndrome)は、元気に育っていた赤ちゃんが睡眠中に突然亡くなる疾患です。原因の解明は進んでいないものの、以下の3つのポイントで発症リスクを下げられることがわかっています。
SIDSリスクを下げる3つのポイント(政府広報オンラインより)
- 11歳になるまでは、寝かせるときはあおむけに寝かせる
- 2できるだけ母乳で育てる
- 3たばこをやめる(周囲の喫煙も含む)
「できるだけ母乳で育てる」とされていますが、完全母乳でなくても混合育児でも効果があるとされています。母乳の量より、授乳を続けること自体に意義があります。
調乳に使う水の選び方と注意点
粉ミルクに使う水選びは意外と盲点になりがちです。基本的には水道水で問題ありませんが、いくつかの注意点があります。
水の種類別・使える?使えない?
- ✓水道水:基本的に使用可。お住まいの地域で硬度が60以上の場合は水道局のデータを確認しましょう。
- ✓ウォーターサーバー:調乳使用可否をメーカーに確認してから使用しましょう。
- !ミネラルウォーター:硬度60以上だと赤ちゃんが下痢をする可能性があるため避けましょう。
- !水素水・アルカリ水:赤ちゃんには使用不可です。
- ✓市販の調乳用純水:硬度が管理されており安心して使えます。
災害などでお湯が手に入らない場合や水の硬度が高い地域では、硬度300以下(国が定める水道水基準以下)のものであれば一時的な使用は許容されます。
安全な粉ミルクの作り方と保存方法
ミルクの調乳には衛生管理が欠かせません。手順を守ることで赤ちゃんへの感染リスクを防ぐことができます。
方法① 基本の作り方
- 70℃以上のお湯を用意する(粉ミルクの殺菌のため。80〜90℃でも可)
- 粉ミルクを規定量のお湯でよく溶かす
- 流水や冷水を当てて人肌(約36℃)まで冷ます
- 前腕に1〜2滴垂らして熱くないか確認してから与える
方法② 湯冷まし割り(冷ます時間を短縮したいとき)
- 70℃以上のお湯を用意する(粉ミルクの殺菌のため。80〜90℃でも可)
- 規定量の半量のお湯で粉ミルクをよく溶かす
- 清潔な湯冷ましまたは調乳用純水を加えて規定量に合わせる
- 人肌(約36℃)になっているか確認して与える
※湯冷ましはふた付きの清潔な容器に保管し、作り置きは24時間以内に使い切りましょう。
保存・廃棄のポイント
- ✓粉ミルクは結露防止のため常温保管(冷蔵庫不可)
- !飲み残しのミルクは次回の授乳には使わない(細菌増殖のリスクあり)
液体ミルクの特徴と災害時の備え方
2018年に日本でも販売が解禁された液体ミルクは、開封してそのまま与えられる便利さが魅力です。常温保存が可能で賞味期限も比較的長く、災害時の備蓄としても注目されています。
液体ミルクのメリット・デメリット
| メリット | デメリット |
|---|---|
|
・調乳不要でそのまま使える ・常温保存可能 ・お湯やお水が不要 ・夜間授乳・外出時に便利 |
・粉ミルクより価格が高い ・開封後はすぐ使い切る必要あり ・種類・容量の選択肢が少ない |
普段は粉ミルクを使いながら、液体ミルクをローリングストック(使いながら補充)しておくのが合理的です。地震や台風などの備えとして、数本常備しておくと安心です。
まとめ|母乳・ミルクの選択で大切なこと
- ✓母乳が出なくても大丈夫。混合育児は赤ちゃんにも家族にも優しい現実的な選択肢です。
- ✓母乳の免疫成分は粉ミルクでは代替できません。初乳だけでも飲ませることに意義があります。
- ✓調乳は70℃以上のお湯で。水の種類・飲み残しの廃棄など衛生管理を守りましょう。
- ✓液体ミルクを災害時の備えに。ローリングストックで常備しておくと安心です。
※この記事は調剤薬局勤務の薬剤師が、医学的根拠に基づき一般的な情報をわかりやすくまとめたものです。実際の授乳・栄養管理については医師・薬剤師・助産師など専門家にご相談ください。
【参考資料】
1. 厚生労働省「平成27年度乳幼児栄養調査結果の概要」
2. 雪印ビーンスターク 母乳研究・赤ちゃん研究
https://www.beanstalksnow.co.jp/labo/baby/
3. 日本小児医療保健協議会栄養委員会「乳児期のビタミンD欠乏の予防に関する提言」(2025年)
4. 政府広報オンライン「赤ちゃんの原因不明の突然死 SIDSの発症リスクを低くする3つのポイント」
5. 雪印ビーンスタークONLINE「意外と知らない!?赤ちゃんのミルクのこと」


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